特定技能「造船・舶用工業」の技能測定試験を解説!内容・区分・実施団体
日本の基幹産業である造船・舶用工業分野。その現場を支える専門人材の確保は、業界全体の喫緊の課題です。この課題に対応するため、「特定技能」の在留資格を持つ外国人材の活躍に大きな期待が寄せられています。
しかし、特定技能の資格を得るためには、専門的な技能と知識を証明する「技能測定試験」に合格しなければなりません。
「試験はどこが実施しているの?」
「どんな内容の問題が出るんだろう?」
「自社で受け入れてもらうには、どうすればいい?」
本記事では、このような疑問をお持ちの事業者様や、受験を考える外国人の方々のために、特定技能「造船・舶用工業」分野の技能測定試験について、その全てを分かりやすく解説します。
試験の全体像:実施団体と2つのレベル
まずは、試験の基本的な枠組みを理解しましょう。
試験を実施するのは「一般財団法人日本海事協会(ClassNK)」
造船・舶用工業分野の特定技能試験は、船舶の安全や海洋環境の保全に関する国際的な船級協会である「一般財団法人日本海事協会(ClassNK)」が一貫して実施しています。試験に関する最新情報や正式な案内は、必ず日本海事協会のウェブサイトで確認するようにしてください。
「特定技能1号」と「特定技能2号」のレベルの違い
試験には、2つのレベルがあります。
- 特定技能1号: 相当程度の知識又は経験を持つ「即戦力」となる人材向けの試験です。まずはこの1号資格の取得を目指すのが一般的です。
- 特定技能2号: 1号よりもさらに熟練した技能を持ち、現場のリーダーとして複数の作業員を指導・監督できる「管理者」レベルの人材向けの、より難易度の高い試験です。
【特定技能1号試験】即戦力レベルを測る試験内容
特定技能1号の試験は、学科試験と実技試験の両方に合格する必要があります。
受験資格:満17歳以上なら誰でも
試験日において満17歳以上であれば、国籍や学歴、実務経験を問わず誰でも受験することができます。日本国内で受験する場合は、有効な在留資格(短期滞在も含む)を持っていることが条件です。
試験形式:学科試験と実技試験
試験は日本語(漢字にはふりがな付き)で行われ、以下の形式で実施されます。
- 学科試験: 安全衛生に関する共通の知識や、各業務区分に応じた専門知識が問われます。多肢選択式のペーパーテストで、試験時間は60分、問題数は30問程度。合格ラインは60%以上の正答率です。
- 実技試験: 選択した業務区分ごとに、実際に工具や機械を使って作業を行う「作業試験」が課されます。技能検定3級相当のレベルが想定されています。
6つの業務区分
1号試験では、以下の6つの専門分野(業務区分)から1つを選択して受験します。
- 溶接: 指示書に従い、鋼板の溶接作業を行います。手溶接または半自動溶接の技能が問われます。
- 塗装: 図面に従い、スプレーガン等を用いて鋼材への塗装作業を行います。
- 鉄工: 図面に基づき、けがき、ガス切断、仮付け溶接などを行い、鋼材を加工・組立します。
- 仕上げ: 船舶や舶用製品の組立、据付け、調整など、最終的な仕上げ作業の技能が問われます。
- 機械加工: 旋盤などの工作機械を操作し、図面に従って部品を加工します。
- 電気機器組立て: 配電盤や制御盤の組立て、配線作業などを行います。
日本語能力の証明も必要(JLPT N4相当)
技能試験の合格に加え、特定技能1号の資格を得るには、以下のいずれかの日本語試験に合格し、基本的な日本語能力があることを証明する必要があります。
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
- 日本語能力試験(JLPT)のN4以上
【特定技能2号試験】現場リーダーを目指すための最難関試験
特定技能2号は、現場の管理者・監督者としての活躍が期待される、非常に高い技能レベルを証明するための試験です。
受験資格:2年以上の監督者として実務経験が必須
大きな特徴は、 「造船・舶用工業分野において、複数の作業員を指導・監督する者として2年以上の実務経験」 が受験資格として必須である点です。単に技能レベルが高いだけでなく、現場でのリーダー経験が求められます。
試験形式:より高度な学科・実技試験
試験は1号と同様に学科と実技で行われますが、そのレベルは格段に上がります。実技試験では、技能検定1級(最上級技能者レベル)に相当する、極めて高度で専門的な作業が求められます。
3つの業務区分
2号試験の業務区分は、現在のところ以下の3つに絞られています。
- 溶接
- 塗装
- 鉄工
試験の申し込みと日程:独自の「出張試験方式」とは?
造船・舶用工業分野の試験は、一般的な資格試験とは少し異なる方式で実施されます。
決まった日程はない?随時実施の仕組み
この試験には、全国一斉の決まった試験日がありません。原則として、受験を希望する企業や団体からの申請に応じて、随時実施されます。
企業が会場を準備し、日本海事協会が監督者を派遣
「出張試験方式」が基本となっており、受験を希望する企業等が、自社工場などの適切な施設や設備を試験会場として準備します。その上で日本海事協会と日程を調整し、試験監督者が派遣されて試験が実施される、という流れです。
国内・国外での受験について
この出張試験方式により、国内の各事業所はもちろん、フィリピンなど海外の送出し機関等でも試験の実施が可能です。
試験対策と合格のポイント
計画的な準備が合格への鍵となります。
学科試験:安全衛生と専門知識の基礎を固める
学科試験では、まず「安全衛生作業」に関する共通の知識が問われます。ヘルメットの着用、工具の正しい使い方、火災防止など、現場作業の基本となる安全ルールを徹底することが重要です。その上で、選択する業務区分の専門知識をテキスト等で学習しましょう。
実技試験:図面を正確に読み取り、安全に作業する
実技試験では、製作図や作業指示書を正確に理解し、制限時間内に、かつ安全に作業を完了させる能力が評価されます。日頃の業務から、図面をよく確認し、安全手順を遵守する習慣を身につけることが、何よりの対策となります。
技能実習2号からの移行なら試験免除の可能性も
朗報として、造船・舶用工業分野の技能実習2号を良好に修了した者は、特定技能1号の技能試験と日本語試験の両方が免除されます。これにより、技能実習から特定技能へスムーズにキャリアを繋ぐことが可能です。
計画的な準備で特定技能の資格取得を目指そう
今回は、特定技能「造船・舶用工業」分野の技能測定試験について詳しく解説しました。
- 試験実施団体は「日本海事協会(ClassNK)」
- 1号は「即戦力」、2号は「現場リーダー」レベルの試験
- 学科と実技の両方に合格する必要がある
- 企業が会場を準備する「出張試験方式」で随時実施される
- 技能実習2号からの移行では、試験が免除される
この試験は、外国人材が日本でその専門性を発揮し、キャリアを築くための重要なステップです。企業と受験者が協力し、計画的に準備を進めることで、合格への道は必ず開かれます。
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