特定技能1号と2号の違いは?対象分野、在留期間、家族帯同について解説
特定技能1号と2号の違いは?対象分野、在留期間、家族帯同について解説
特定技能制度における「1号」と「2号」の違いについて、混乱している企業の人事担当者も多いのではないでしょうか。特定技能2号の対象分野は、2022年まで「建設」および「造船・舶用工業」の2分野に限定されていました。しかし、特定技能1号には通算5年という在留期間の上限が設けられており、2019年の制度開始当初から在留している外国人材の期間満了が近づいていることを受け、2023年に特定技能2号の対象分野の拡大が実施されました。 この記事では、特定技能1号と2号の具体的な違いから、2025年の最新動向まで、採用担当者が知っておくべき重要なポイントを詳しく解説します。
特定技能1号と2号の基本的な違い
求められる技能レベル
- 特定技能1号 特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事するための能力が必要です。比較的基本的な業務を担当する外国人材向けの在留資格です。
- 特定技能2号 特定産業分野に属する熟練した技能が必要になります。2号では、1号よりも高い技術レベルが求められています。2号は専門的で高度な技能を必要とする業務に従事します。
在留期間の違い
- 特定技能1号
- 上限5年(更新は1年・6ヵ月・4ヵ月ごと)
- 在留期間は上陸許可を受けた日、もしくは変更許可を受けた日から通算されます。
- 特定技能2号
- 上限なし(更新は3年・1年・6ヵ月ごと)
- 一定の要件を満たすと、将来、永住申請が可能となります。
対象分野の比較
特定技能1号の対象分野(16分野) 2024年3月29日の閣議決定により、特定技能1号の対象分野が新たに4分野追加されました。現在の対象分野は以下の16分野です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業(旧:素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 自動車運送業(2024年追加)
- 鉄道(2024年追加)
- 林業(2024年追加)
- 木材産業(2024年追加)
特定技能2号の対象分野(現在11分野) 2023年6月9日、政府は特定技能2号の受け入れ分野の拡大を発表しました。当初は建設と造船・舶用工業の2分野に限定されていた在留資格でしたが、深刻な人手不足に直面している農業、宿泊業、飲食料品製造業、外食業などの分野にも対象が拡大されることになりました。 現在の対象分野は以下の11分野です。
- 建設
- 造船・舶用工業
- ビルクリーニング(2023年拡大)
- 工業製品製造業(2023年拡大)
- 自動車整備(2023年拡大)
- 航空(2023年拡大)
- 宿泊(2023年拡大)
- 農業(2023年拡大)
- 漁業(2023年拡大)
- 飲食料品製造業(2023年拡大)
- 外食業(2023年拡大)
注意点:「介護」分野については、在留資格「介護」などの別の移行先があることから2号の創設は見送りとなっています。
家族帯同の違い
- 特定技能1号:家族帯同は原則不可 「特定技能1号」の家族帯同は原則として認められていません。特定技能1号は、主に5年までの在留期間であり、家族帯同は認められていません。
- 特定技能2号:家族帯同が可能 「特定技能2号」では母国から家族(配偶者または子)を呼び寄せることが可能です。特定技能2号は更新の上限がなく、家族帯同も可能になります。
家族帯同の条件: 条件を満たせば家族を呼び寄せることが可能ですが、具体的な条件については以下の通りです。
- 安定した収入があること
- 家族を扶養できる経済基盤があること
- 適切な住居が確保されていること
取得方法の違い
特定技能1号の取得方法
- 方法1:試験ルート
- 技能評価試験に合格
- 日本語能力試験(多くの場合N4レベル)に合格
- 方法2:技能実習からの移行
- 技能実習2号を良好に修了
- 同一分野での移行の場合、試験免除
特定技能2号の取得方法
- 取得要件
- 原則として、特定技能1号として一定期間就労していること
- 各分野で定められた「熟練技能の評価試験」に合格すること
- 特定技能2号を取得するためには、特定技能1号と異なり、実務経験を積み、業種によっては管理業務を一定期間経験しなければなりません。
- 建設分野の場合の具体例
- 現場で班長経験を積めるように指導・教育を行い実務経験を蓄積させるなど、管理的な業務の経験が求められます。
日本語能力要件の違い
- 特定技能1号 特定技能1号の外国人は、日本語能力試験に合格する必要があります。一般的には日本語能力試験N4レベル以上が求められます。
- 特定技能2号 特定技能2号の外国人は、日本語能力試験が免除されます。これは、既に特定技能1号として日本で就労経験があることが前提となっているためです。
支援体制の違い
- 特定技能1号
- 登録支援機関による支援計画の実施が必須
- 定期的な面談や生活サポートが必要
- 企業が直接支援するか、登録支援機関に委託
- 特定技能2号 特定技能2号は、永住権取得の要件を満たせる可能性があることに加え、特定技能1号では必須であった支援計画の実施が不要になります。より自立した外国人材として扱われます。
永住権への道筋
- 特定技能1号
- 永住権申請への直接的な道筋はなし
- 5年で在留期間が終了
- 特定技能2号
- 「在留期間の上限なし」かつ「更新制限なし」の点で、事実上の永住権への道筋となります。
- 一定の条件を満たせば永住権の申請が可能です。
2025年の制度動向と今後の展望
対象分野の拡大予定
2023年6月9日、政府は特定技能2号の受け入れ分野の拡大を発表しました。当初、在留資格が認められていたのは建設と造船・舶用工業の2分野のみでしたが、人手不足がより深刻な農業や宿泊業、飲食料品製造業、外食業などにも拡大されました。また特定技能全体としても、自動車運送や鉄道など新しく4分野が追加されるなど、新しい政策が進められています。 現在では特定技能2号は11分野まで拡大し、さらに将来的には以下のような展開が予想されます。
- 新規追加された4分野(自動車運送業、鉄道、林業、木材産業)への2号拡大
- その他の分野での段階的な拡大
企業への影響
そこで採用競争が激化する前に、今、採用の検討を始めるのがおすすめです。特に以下の点で企業戦略の見直しが必要です。
- 長期雇用戦略の重要性
- 特定技能1号から2号への移行をサポートする体制作り
- 技能向上のための教育プログラム
- キャリアパスの明確化
- 競争優位の確保
- 優秀な特定技能1号人材の早期確保
- 2号移行支援による人材定着率向上
- 長期的な人材投資の視点
適切な人材戦略の構築が重要
特定技能1号と2号の違いを理解することは、効果的な外国人材活用戦略を構築する上で不可欠です。
- 特定技能1号の特徴
- 在留期間:最大5年
- 家族帯同:不可
- 対象分野:16分野
- 支援:必須
- 特定技能2号の特徴
- 在留期間:無制限
- 家族帯同:可能
- 対象分野:現在11分野
- 支援:不要
永住権申請への道筋 特定技能1号は「まず日本の現場で力を発揮してもらう入り口」として、2号は「より長く安心して活躍してもらう」ための制度設計となっています。 企業にとっては、短期的な人手不足解消だけでなく、長期的な人材育成と定着を見据えた戦略的なアプローチが成功の鍵となるでしょう。特定技能制度を最大限に活用するためには、1号から2号への移行支援を含めた包括的な人材戦略の構築が求められています。
私どもは企業の皆様がこの新しい制度にスムーズに対応できるよう、情報提供から定着支援まで、きめ細やかな支援を行ってまいります。ご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。
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