【2025年最新】特定技能の「特定技能雇用契約」とは?必須項目と締結時の6つの注意点を専門家が解説
「特定技能」の在留資格で外国人材の受け入れを検討しているけれど、雇用契約で何を注意すればよいか分からない…
そんなお悩みはありませんか?
特定技能制度では、外国人材が日本で安定的・円滑に活動できるよう、企業(特定技能所属機関)と外国人材の間で結ぶ「特定技能雇用契約」に特別な基準が設けられています。この契約を正しく理解し、適切に締結することが、トラブルを防ぎ、良好な雇用関係を築くための第一歩です。
本記事では、これまで多くの特定技能外国人材を支援してきた専門家の視点から、特定技能雇用契約の基本、必ず盛り込むべき項目、そして締結時に特に注意すべき6つのポイントを分かりやすく解説します。
特定技能雇用契約とは?通常の雇用契約との大きな違い
特定技能雇用契約は、日本の労働関係法令が適用される点では、日本人を雇用する場合の雇用契約と基本的に同じです。しかし、それに加えて、外国人材が不当な扱いや不利益を受けることなく、その能力を十分に発揮できるよう、出入国管理及び難民認定法(入管法)で定められた基準を満たす必要があります。
この基準を満たさない契約は、在留資格の許可が下りないだけでなく、受け入れ後に行政指導の対象となる可能性もあるため、細心の注意が必要です。
【雛形にも使える】特定技能雇用契約の必須記載項目一覧
出入国在留管理庁の「特定技能外国人受入れに関する運用要領」では、特定技能雇用契約に必ず記載しなければならない項目が定められています。
必須記載項目 |
解説 |
従事すべき業務の内容 |
「〇〇分野における△△の業務」のように、特定技能の活動として認められた業務内容を具体的かつ明確に記載します。 |
所定労働時間 |
フルタイム(週30時間以上かつ週5日以上が目安)であることが原則です。変形労働時間制を採用する場合は、その内容を明記します。 |
報酬の額 |
日本人従業員と同等以上の金額であることが絶対条件です。詳細は後述します。 |
一時帰国のための休暇 |
特定技能1号の在留期間中に、外国人材が有給休暇を取得して一時帰国を希望する場合、事業の運営に支障がない範囲で取得できるよう配慮する旨を記載します。 |
契約解除に関する措置 |
契約終了後の帰国費用を誰が負担するかを明記します。本人が負担できない場合は、企業が負担し、その後の出国が円滑に行われるよう支援する必要があります。 |
費用の負担 |
保証金の徴収や違約金を定める契約は禁止されています。また、職業紹介費用や登録支援機関への支援委託費用などを外国人材に負担させることもできません。 |
その他支援に関する事項 |
企業が外国人材に対して行う支援(1号特定技能外国人支援計画)の内容や、その費用を企業が負担することを明記します。 |
これらの項目は、在留資格申請時に提出する「特定技能雇用契約書」及び「労働条件通知書」の写しにすべて記載されている必要があります。
【トラブル回避】特定技能雇用契約を締結する際の6つの重要注意点
上記の必須項目を踏まえ、契約を締結する際に特に注意すべき6つのポイントを解説します。
注意点1:報酬は「日本人従業員との同等以上」が絶対条件
特定技能雇用契約で最も重要なポイントの一つが報酬額です。「日本人と同等以上」とは、単に最低賃金をクリアしていればよいというわけではありません。
- 比較対象: 同じ業務に従事する同程度の技術や経験を持つ日本人従業員の賃金と比較します。
- 客観的証明: 賃金規程や、比較対象となる日本人従業員の賃金台帳などを準備し、同等以上であることを客観的に説明できるようにしておく必要があります。
不当に低い賃金設定は、外国人材の権利を侵害するだけでなく、安価な労働力として雇用していると見なされ、在留資格が不許可となる最大の要因の一つです。
注意点2:契約締結前の「事前ガイダンス」は必須
企業は、特定技能雇用契約を締結する前に、外国人材本人に対して「事前ガイダンス」を行うことが義務付けられています。
事前ガイダンスでは、以下の内容を本人が十分に理解できる言語で、対面またはオンライン(Web会議システムなど)で3時間程度かけて説明する必要があります。
- 従事する業務内容、報酬額、その他の労働条件
- 日本で行うことができる活動の内容
- 日本への入国・在留に関する手続き
- 保証金の徴収や違約金契約の禁止について
この事前ガイダンスは、外国人材が契約内容や日本での生活について正しく理解し、納得した上で来日・就労するために非常に重要です。
注意点3:契約書は必ず「母国語併記」で作成・交付する
雇用契約書や労働条件通知書は、日本語版とあわせて、外国人材の母国語で記載されたものを作成し、本人に交付する必要があります。
口頭での説明だけでなく、書面で母国語の契約内容を確認できるようにすることで、後の「言った、言わない」といったトラブルを防ぎます。
注意点4:保証金や違約金を定める契約は法律で固く禁止
「途中で辞めたら罰金」「パスポートを預かる」といった、離職を妨げるための保証金の徴収や違約金(ペナルティー)を定める契約は、いかなる名目であっても法律で固く禁じられています。
このような契約は人権侵害にあたり、発覚した場合は厳しい罰則の対象となります。
注意点5:支援委託費などを本人に負担させてはならない
登録支援機関に外国人材への支援を委託する場合、その委託費用は全額、企業が負担しなければなりません。
同様に、在留資格の申請費用や職業紹介の費用なども、外国人材本人に請求することは認められていません。これらの費用を給与から天引きすることも違法です。
注意点6:契約内容の重要な変更には「届出」が必要
昇給や業務内容の変更など、特定技能雇用契約の内容に重要な変更があった場合は、その都度、地方出入国在留管理局への届出が必要になるケースがあります。
例えば、報酬額が変更になった場合や、同じ事業所内でも業務内容が大きく変わる場合などが該当します。変更が生じた場合は、自己判断せず、必ず登録支援機関や地方出入国在留管理局に確認しましょう。
もし契約基準に違反したら?罰則やリスクについて
特定技能雇用契約で定められた基準を満たさない場合、企業には重大なリスクや罰則が科される可能性があります。
まず、契約内容に不備があれば、前提として在留資格の許可が下りません。仮に受け入れ後に違反が発覚した場合は、出入国在留管理庁から改善を求める行政指導の対象となります。
さらに、保証金の徴収や不当に低い賃金といった悪質なケースは、人権侵害と見なされ厳しい罰則が科されます。最悪の場合、特定技能所属機関としての基準を満たさないと判断され、今後の特定技能外国人材の受け入れが一切できなくなる可能性もあります。
「知らなかった」「うっかりしていた」では済まされない重要なルールであるため、契約内容は必ず遵守しましょう。
まとめ:適切な契約でトラブルを防ぎ、良好な関係を|不明点は専門家へ相談
特定技能雇用契約は、単なる法律上の手続きではありません。これは、日本で働く意欲のある外国人材の権利を守り、企業が安心して彼らを受け入れ、共に成長していくための大切な約束事です。
今回解説したポイントを確実に押さえ、適正な契約を結ぶことが、外国人材の定着と活躍、ひいては企業の発展につながります。
「自社の場合、報酬設定はこれで大丈夫だろうか?」「契約書の作り方が具体的に分からない」など、少しでも不安や疑問があれば、私たち登録支援機関にご相談ください。専門的な知識と経験に基づき、貴社に最適な受け入れ体制の構築をサポートいたします。
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