【特定技能:ビルクリーニング分野】業務内容と働く場所、キャリアパスを徹底解説
1. 特定技能「ビルクリーニング」とは?社会を支える清掃のプロフェッショナル
私たちが日常的に利用するオフィスビル、商業施設、ホテル、病院。これらの建築物が常に清潔で快適な環境を保てているのは、ビルクリーニングの専門家による日々の丁寧な仕事があるからです。しかし、この重要な業界もまた、他の多くの分野と同様に深刻な人手不足という課題に直面しています。この課題に対する有効な解決策として、今まさに注目を集めているのが、特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を持つ外国人材です。
人手不足が深刻なビルメンテナンス業界の現状
ビルメンテナンス業界は、その業務の社会的な重要性とは裏腹に、就業者の高齢化や若年層の入職者不足が長年の課題となっています。建物の衛生環境を維持管理するビルクリーニングは、感染症対策の観点からもその重要性が再認識されており、安定した人材の確保は、社会インフラを維持する上で不可欠と言えます。このような背景から、専門的なスキルを持ち、即戦力として活躍できる特定技能外国人への期待が、業界全体で高まっているのです。
特定技能に求められる役割:即戦力としての専門スキル
特定技能「ビルクリーニング」は、単なる清掃作業員ではありません。建築物の特性や、様々な床材・壁材、汚れの種類に応じた専門的な知識と、適切な清掃用具・薬剤を使いこなす技術が求められます。彼らは、定められた試験に合格することで、その専門性を証明された「清掃のプロフェッショナル」です。受け入れ企業にとっては、研修に多くの時間を割くことなく、すぐに現場で活躍してくれる即戦力として、大きな価値を持つ存在となります。
2. 具体的な仕事内容は?「どこを」「何を」清掃するのか
特定技能「ビルクリーニング」の外国人材が従事する業務は、法律で明確に定められています。受け入れ企業は、その範囲を正しく理解し、適切な業務を割り当てることが重要です。
主な業務:建築物内部の清掃
中心となる業務は、 「建築物内部の清掃」 です。具体的には、以下のような多岐にわたる作業が含まれます。
- 床面の清掃:掃き掃除、拭き掃除、床洗浄機による洗浄、ワックスがけなど
- 壁面・天井の清掃:ほこりの除去、汚れの拭き取りなど
- ガラス・窓の清掃:窓ガラス、鏡、ガラス製パーティションなどの清掃
- トイレ・洗面所の清掃:便器、洗面台、床、備品の衛生管理
- 共用部の清掃:廊下、階段、エレベーター、エントランスホールなどの清掃
- ゴミの回収・分別
これらに加え、清掃用具の準備や後片付け、資機材倉庫の整理整頓といった、清掃業務に直接付随する作業も業務範囲に含まれます。
働く場所は?オフィスビルからホテル、病院まで
働く場所は、 「住宅(人の居住の用に供する家屋)を除く」 建築物と定められています。つまり、個人宅のハウスクリーニングは対象外ですが、それ以外の不特定多数の人が利用する、ほぼすべての建築物が職場となり得ます。
- オフィスビル
- 商業施設(デパート、ショッピングモールなど)
- ホテル・旅館
- 病院・診療所
- 学校
- 空港、駅
- 官公庁の庁舎
- マンション等の共用部分(ロビー、廊下、階段など)
このように、活躍の場は非常に幅広く、多様な環境での経験を積むことが可能です。
注意点:清掃以外の業務がメインになることはない
特定技能制度の趣旨に基づき、あくまでメインの業務は「ビルクリーニング」でなければなりません。例えば、「ホテルの客室整備(ベッドメイク)」や「建物内外の植栽管理」といった業務は、日本人が通常行っている範囲で付随的に従事することは可能ですが、それが主たる業務となるような働き方は認められていません。彼らの専門性を活かすためにも、業務内容のバランスには注意が必要です。
3.【重要】特定技能2号への道:ビルクリーニング分野のキャリアパス
特定技能「ビルクリーニング」分野の最大の魅力は、長期的なキャリア形成が可能である点です。特定技能1号から、より上位の在留資格である「特定技能2号」への道が開かれており、これは他の分野にはない大きなアドバンテージです。
在留期間が無制限になる「特定技能2号」とは?
特定技能2号は、1号を修了した外国人材が、さらに熟練した技能を要する業務に従事するための在留資格です。2号に移行することで、以下の大きなメリットが得られます。
- 在留期間の更新が無制限:条件を満たす限り、在留期間を何度でも更新でき、日本に永住することも視野に入れた長期就労が可能になります。
- 家族の帯同が可能:配偶者と子供を日本に呼び寄せ、一緒に生活することができます。
これは、外国人材が日本に生活基盤を築き、安心してキャリアを追求できることを意味します。企業にとっては、経験を積んだ優秀な人材に、会社の核として末永く活躍してもらえるという、計り知れないメリットがあります。
2号へのステップアップに必要な2つの要件
特定技能1号から2号へステップアップするためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
- 2年以上の実務経験:ビルクリーニングの現場で、複数の作業員を指導しながら業務に従事した経験など、リーダーとしての実務経験が求められます。
-
上位レベルの試験合格:以下のいずれかの試験に合格する必要があります。
- ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験
- ビルクリーニング技能検定1級
これらの要件は、単なる作業員ではなく、現場を管理・監督できる高い専門性を持っていることを証明するものです。
2号取得者に期待される役割:現場のリーダー・管理者
特定技能2号取得者には、単に清掃作業を行うだけでなく、現場のリーダー、管理者としての役割が期待されます。具体的には、他の作業員(日本人、外国人含む)への作業指示や指導、作業計画の作成、品質管理、安全管理など、現場全体のマネジメントを担います。将来的に、企業の幹部候補として活躍することも十分に可能な、夢のあるキャリアパスと言えるでしょう。
4. 特定技能「ビルクリーニング」になるための試験内容
特定技能の在留資格を得るためには、技能と日本語能力を測定する試験に合格する必要があります。ここでは、1号と2号、それぞれの試験内容について解説します。
特定技能1号評価試験(学科・実技)
特定技能1号を取得するためには、原則として「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」と、基礎的な日本語試験(JLPT N4またはJFT-Basic)の両方に合格する必要があります。1号評価試験は、コンピュータ上で解答するCBT方式で行われ、学科試験と実技試験で構成されています。
- 学科試験:写真やイラストを見て、清掃方法の適切さなどを判断する問題が出題されます。
- 実技試験:床面の清掃作業などについて、作業手順の計画などを問う問題が出題されます。
特定技能2号評価試験(学科・実技)
特定技能2号を目指すための試験は、ペーパーテスト方式で行われます。1号よりもさらに高度で、管理者としての知識・能力が問われます。
- 学科試験:品質管理、原価管理、安全衛生管理、部下への指導方法など、現場責任者として必要な知識が幅広く問われます。
- 実技試験:作業計画の立案や、見積もりなど、より実践的な管理能力が評価されます。
技能実習2号からの移行なら試験免除も
なお、ビルクリーニング職種の技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能1号への移行に際して、技能試験と日本語試験の両方が免除されます。このルートは、多くの企業にとって、既に日本の職場文化や業務に慣れた人材を確保するための有効な手段となっています。
5. 受入れ企業が遵守すべきルールと「協議会」の役割
特定技能外国人を受け入れる企業には、制度を適正に運用するためのいくつかの義務が課せられています。その中でも特に重要なのが、「協議会」への加入です。
「ビルクリーニング分野特定技能協議会」への加入義務
特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を受け入れる全ての企業は、国土交通省が設置・運営する 「ビルクリーニング分野特定技能協議会」 の構成員になることが義務付けられています。この協議会は、制度の円滑な運用を図るため、以下のような役割を担っています。
- 構成員(受入れ企業など)に対し、必要な情報の提供や指導・助言を行う。
- 地域ごとの人手不足の状況を把握し、必要な対応を検討する。
- 法令違反の疑いがある企業に対し、調査や指導を行う。
企業は、初めて特定技能外国人を受け入れてから4ヶ月以内に、この協議会への加入手続きを完了させる必要があります。
適正な雇用と支援計画の重要性
協議会への加入に加え、もちろん、日本人と同等以上の報酬額の支払いや、適切な労働時間の管理といった労働関係法令の遵守は絶対です。また、住居の確保や公的手続きの支援、日本語学習の機会提供など、法律で定められた10項目の支援を網羅した 「支援計画」 を策定し、誠実に実行する責任があります。これらの義務を怠った場合、特定技能外国人の受け入れができなくなるだけでなく、厳しい罰則の対象となる可能性もあります。
まとめ
特定技能「ビルクリーニング」は、単に人手不足を補うためだけの制度ではありません。1号から2号へという明確なキャリアパスが用意されており、外国人材が専門家として、そして将来の現場リーダーとして、日本で長期的に活躍できる道が示されています。
企業にとっては、即戦力となる人材を確保できるだけでなく、将来の幹部候補を育成できるという大きなメリットがあります。外国人材にとっては、安定した身分と家族との生活を手に入れ、日本で夢を実現できるチャンスです。このWin-Winの関係を築くためには、企業側が制度を正しく理解し、彼らを「パートナー」として迎え入れる温かい支援体制を整えることが、何よりも重要です。この記事が、その第一歩となれば幸いです。
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