特定技能で永住権は取得できる?キャリアパスと要件について徹底解説
「特定技能で採用した外国人に、できるだけ長く活躍してほしい」
「将来的に、永住権の取得もサポートしてあげたいが、どうすれば良いのだろう?」
人手不足の解消に向けて特定技能外国人の受け入れを検討する中で、このようにお考えの経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、特定技能の在留資格から永住権を目指すことは可能です。しかし、そのためにはいくつかの重要な要件と、計画的なキャリアパスの理解が不可欠です。
この記事では、特定技能外国人が永住権を取得するための具体的な道のり、分野別のキャリアパス、そして受け入れ企業として知っておくべきサポートのポイントを、専門家の視点から分かりやすく解説します。
【結論】特定技能で永住権は目指せる!ただし「特定技能2号」が必須条件
まず最も重要なポイントは、永住権を目指すためには 「特定技能2号」の在留資格が必要だということです。
「特定技能1号」のままでは永住できない理由
「特定技能1号」は、特定の産業分野で「相当程度の知識又は経験」を持つ外国人向けの在留資格ですが、在留期間が通算で上限5年と定められています。
一方、永住権を申請するための要件の一つに「原則として10年以上継続して日本に在留していること」があります。在留期間が5年しかない特定技能1号のままでは、この条件を満たすことができないため、永住権の申請はできません。
なぜ「特定技能2号」なら永住の可能性があるのか?
「特定技能2号」は、特定技能1号よりも熟練した技能を持つ外国人向けの在留資格です。最大の違いは在留期間に上限がないことで、3年、1年または6か月ごとに在留期間の更新が可能です。
このため、特定技能2号として日本に在留し続けることで、永住権の申請要件である「10年以上の在留」を満たすことが可能になります。これが、特定技能2号なら永住の道が開かれる理由です。
特定技能1号と2号の比較
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
在留期間 | 通算上限5年 | 上限なし(更新可能) |
技能水準 | 相当程度の知識・経験 | 熟練した技能 |
家族帯同 | 原則不可 | 可(配偶者・子) |
永住権申請 | 不可 | 可能 |
永住権を取得するための3つの重要要件
特定技能2号へ移行した上で、永住権を申請するには、出入国在留管理庁が定める「永住許可に関するガイドライン」の要件をクリアする必要があります。特に重要な3つの要件を見ていきましょう。
要件①:在留期間|「10年以上の在留」と「5年以上の就労」
これが最も基本となる要件です。
- 原則として、継続して10年以上日本に在留していること
- 上記10年のうち、直近5年以上は「就労資格」または「居住資格」で在留していること
ここで非常に重要な注意点があります。「技能実習」や「特定技能1号」の期間は、1の「10年在留」の期間にはカウントされますが、2の 「5年就労」の期間にはカウントされません。
つまり、特定技能2号などの就労資格で5年以上働き続ける必要がある、ということです。
【ポイント】
例えば、「技能実習2年+特定技能1号5年+特定技能2号3年」では、合計10年在留していますが、就労資格での在留が3年しかないため、要件を満たしません。この場合、さらに2年間、特定技能2号として働く必要があります。
要件②:素行・生計|公的義務の履行と安定した生活
次に、日本社会の一員としての責任を果たしているか、安定した生活を送れているかが問われます。
-
素行が善良であること
- 法律を遵守し、犯罪歴(罰金刑や懲役刑など)がないこと。
- 納税、年金、健康保険料などの公的義務をきちんと納めていること。
-
独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
- 公共の負担にならず、将来にわたって安定した生活が見込まれること。
- 世帯単位での収入が安定していることが求められます。
特に、税金や社会保険料の未納・滞納は、審査で非常に厳しくチェックされるポイントです。
要件③:国益・その他|身元保証人の確保など
最後に、その外国人の永住が「日本の利益になるか」という観点や、その他の要件です。
-
日本の国益に合致すること
- 長期間日本に在住し、社会の一員として定着していることなどが含まれます。
-
身元保証人がいること
- 原則として、日本人または永住者の方に身元保証人になってもらう必要があります。会社の社長や上司がなるケースも多いです。
【分野別】永住権取得までの具体的なキャリアパス
それでは、実際に永住権を目指すためのキャリアパスを、分野別に見ていきましょう。
建設・造船など(2号対象分野)のキャリアパス
建設、造船・舶用工業などの特定技能2号対象分野では、比較的ストレートなキャリアパスを描くことができます。
ステップ1:特定技能1号として入社・就労(最長5年)
↓
ステップ2:特定技能2号の試験に合格し、資格を移行
↓
ステップ3:特定技能2号として働きながら、永住権の要件(10年在留/5年就労など)を満たす
↓
ステップ4:永住許可申請
【重要】介護分野のキャリアパス|「介護福祉士」が唯一の道
ここで特に注意が必要なのが「介護」分野です。2024年現在、介護分野は特定技能2号の対象外となっています。
そのため、介護分野で働く外国人が5年を超えて就労し、永住を目指すためには、別のルートを辿る必要があります。それが、国家資格「介護福祉士」の取得です。
ステップ1:特定技能1号(介護)として入社・就労
↓
ステップ2:介護現場で3年以上の実務経験を積む
↓
ステップ3:介護福祉士国家試験に合格する
↓
ステップ4:在留資格を「介護」に変更する
(これにより在留期間の上限がなくなります)
↓
ステップ5:在留資格「介護」で働きながら、永住権の要件を満たす
↓
ステップ6:永住許可申請
介護分野で外国人に長く活躍してもらうためには、この「介護福祉士」へのキャリアパスが極めて重要になります。
優秀な人材に長く働いてもらうために企業ができること
ここまで見てきたように、永住権への道は決して簡単ではありません。だからこそ、受け入れ企業による計画的なサポートが、人材の定着と活躍の鍵を握ります。
1. 明確なキャリアパスの提示と共有
入社時に「あなたのキャリアを応援している」というメッセージと共に、永住権取得までの具体的な道のりを提示してあげましょう。目標が明確になることで、本人のモチベーションは大きく向上します。
2. 資格取得の支援(学習サポート、費用補助など)
特に介護分野における「介護福祉士」や、他分野での「特定技能2号」の資格取得は、キャリアアップの絶対条件です。
- 勉強会の実施、eラーニングの導入
- 受験費用の補助
- 資格手当の支給
といった具体的な支援策が有効です。
3. 日本の社会制度に関する情報提供とサポート
税金や年金制度は、外国人にとって非常に複雑です。なぜ支払う必要があるのか、将来どのように返ってくるのかを丁寧に説明し、手続きのサポートを行うことで、意図しない未納・滞納を防ぐことができます。
まとめ|計画的なキャリア支援が、企業の未来を創る
特定技能外国人が永住権を取得するには、
- 特定技能2号へ移行すること(介護分野は「介護福祉士」取得)
- 「10年在留・5年就労」の要件を満たすこと
-
税金や年金などの公的義務を果たすこと
といった複数のハードルを越える必要があります。
これは、本人だけの力で達成できるものではありません。
受け入れ企業が、明確なキャリアパスを示し、資格取得を支援し、日本社会への適応をサポートすること。こうした計画的で手厚い支援こそが、優秀な人材の長期的な定着を促し、ひいては企業の持続的な成長に繋がるのです。
特定技能人材の受け入れ・定着に関するご相談は、専門家である登録支援機関までお気軽にお問い合わせください。
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